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今日は、阿部暁子さんの『カフネ』を紹介します。
2025年本屋大賞受賞作です。
本屋大賞受賞作ですので、
すでに多くの方が感想を発信しています。
あえて、
書評や他の方の感想を読まずに、
私なりの感想を書いたつもりです。
とくに、
登場人物の死に関わる真相について、
ネタバレの無いように書きました。
この物語は、
最愛の弟を亡くした姉・薫子と、
弟の元恋人だったせつなが、
食と家事を通して心を癒やしていく過程を描いた作品です。
タイトルの「カフネ」は、
ポルトガル語で、「愛する人の髪にそっと指を通すしぐさ」という意味だそうです。
インタビュー記事で、阿部さんが説明しています。
登場人物たちの驚きと戸惑い、苦悩と受容の先に浮かび上がってくる真摯な思い。一言では言い表しがたい感情だが、そこにすとんとはまるのが、「カフネ」という言葉だ。ポルトガル語で、「愛する人の髪にそっと指を通すしぐさ」という意味だという。
「タイトルは最初の段階から決めていました。友達が誕生日プレゼントにくれた『翻訳できない世界のことば』という本に、この言葉があって、とても素敵だなと思っていたんです。今回の話を書く時に、終着点を表すのに象徴的でいい言葉だなと思いました。今回はわりと〝カフネ〟に向かって話を書いていったところがあります」
阿部暁子さん『カフネ』*PickUPインタビュー*
小説丸
『翻訳できない世界のことば』は、
以前、書店で手に取ってパラパラと読んだことがありました。
これを機に手に入れたいと思いました。
日本語の『積読』も紹介されています。
弟を突然亡くした野宮薫子は、
弟の遺志に従い、弟の元恋人だった小野寺せつなと出会います。
せつなの無愛想な態度に憤る薫子ですが、
不摂生な生活による疲れから倒れてしまい、
せつなの手料理に助けられます。
離婚を経て荒れた生活を送っていた薫子と、
孤独を抱えながら生きてきたせつな。
二人は家事代行サービス『カフネ』の仕事を通して、
出会った人々の暮らしを整えながら、
自らの心も少しずつ癒していきます。
生きる痛みと温もりを描く、こころの再生の物語です。
特に心に残ったのは、
薫子が不妊治療に苦しみ。
努力しても報われない現実に打ちのめされる場面でした。
今まで努力で人生を切り開いてきた人ほど、
「努力ではどうにもならないこと」に直面すると、
気持ちのやり場がなくなってしまう
――その苦しみが痛いほど伝わってきました。
私自身も不妊治療の経験者です。
薫子の一喜一憂する気持ちに共感しました。
そしてパートナーとのすれ違いがもたらす絶望感には、
やりきれない思いがしました。
インタビュー記事によれば、作者の阿部さん自身も、不妊治療で苦しんだ経験があるとのこと。
薫子の不妊治療に関する心境は、私自身の体験から書いています。あまりにもきつい時期があったので、「もう、小説に書いたれ!」みたいな気持ちになってしまって。薫子にはかなりきつい設定を背負わせてしまった部分があります。
2025年本屋大賞受賞作『カフネ』はどう生まれた? 著者・阿部暁子が語る、執筆の原動力と自身の体験【インタビュー】ダ・ヴィンチWEB
一方で、せつなもまた、
過酷な生い立ちと、ある秘密を抱えながら、
「ひとりで生きていく」と覚悟を決めた人です。
誰かに頼りたい気持ちを抱えつつも、
他人に迷惑をかけたくない、他人を信じきれない
――そんな現代人の孤独を象徴する存在に思えました。
薫子とせつなが出会い、
少しずつ心を通わせながら、
「一緒に生きる」という
温もりを取り戻していく様子に、
深い感動を覚えました。
血のつながりだけに頼らない、
新しい形の”家族”のような絆。
彼女たちがボランティアで
家事代行に訪れる家庭もまた、
様々な事情を抱え、
血縁だけでは救いきれない
現代の家族のあり方を映しているようでした。
既存の家族ではない、
人と人との関わりといえば、
2023年に放送された、『18/40~ふたりなら夢も恋も~』を思い出しました。
18歳の妊婦と40目前の社会人という、
年齢も立場も違う2人が偶然出会い、
お互いの人生を変えていく話です。
このドラマでは、
”シスターフッド(=女性同士の連帯や絆)”
というキャッチフレーズが使われていました。
幸せの基準は、
誰かに決められるものではない。
家族という枠にとらわれず、
自分たちなりの関係を築きながら生きていく
そんな柔らかい価値観が、
もっと広がってほしいと願わずにはいられません。
「多様性」という言葉で
一括りにする必要はないのだと思います。
他人の価値観を認め合える、
優しい社会を作りたいですよね。
ちょっとした言葉の行き違いや、
ちょっとした生き方の違いで、
すぐに炎上してしまう。
生きづらい世の中に対して、
ひとつの提案をしている物語とも言えるかもしれません。
「多様性」という言葉のひとり歩きと、
それに伴って生じている問題について、
阿部さんはこう語っています。
本作には、マイノリティと呼ばれる人物も登場してきますが、そこでことさら「多様性」というものに焦点を当てたくはなかった。世の中に「多様性」という言葉が蔓延するなか、逆に生きづらくなっている人もいると思うんです。いろいろな生き方をしているこの世界の人たちを、フラットに並べて書きたかったというところがあります。
2025年本屋大賞受賞作『カフネ』はどう生まれた? 著者・阿部暁子が語る、執筆の原動力と自身の体験【インタビュー】ダ・ヴィンチWEB
阿部暁子さんの『カフネ』は、
静かだけれど確かな優しさで、
読んだ人の心にそっと寄り添ってくれる物語でした。
読後、しばらくあたたかい余韻に包まれたまま、
私もまた、自分自身の「生き方」について考えたくなりました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
今回の記事で、参考にしたWEB記事は「小説丸 阿部暁子さん『カフネ』*PickUPインタビュー*」と、「Yahooニュース 2025年本屋大賞受賞作『カフネ』はどう生まれた? 著者・阿部暁子が語る、執筆の原動力と自身の体験【インタビュー】ダヴィンチWEB」です。
阿部暁子さんの他の著書も、読んでみたくなりました。
『金環日蝕』も人気の本です。